
| エコツーリズム会議開催の様子(オーストラリア・アデレード) |
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(財)日本交通公社 岩城 智子
オーストラリアでは、エコツアー事業者を中心として様々な立場の関係者が集うエコツーリズム会議が年1回のペースで開催されています。2003年に南オーストラリア州で開催された会議に参加いたしましたので、その様子や内容についてまとめたレポートを紹介いたします。
会議内容の概要
(1) 主な議論の中心
@ エコツーリズムを産業として根付かせるための地域におけるシステムづくり、行政と民間の役割と連携について
A 自然保護の財源としての観光をどのようにシステム化するか
B インディジニアス(土着文化=オーストラリアではアボリジニ文化を指す)ツーリズムをどのように推進するか
(2) オーストラリアのエコツーリズム議論のフィールド別タイプと主な議論の内容
@ 国立公園や保護エリアにおけるエコツーリズム
・ 自然保護と観光振興のシステムづくり
A 発展途上国におけるエコツーリズム
・ 地元住民への理解促進や地元経済への貢献
・ 人口流出対策、環境破壊対策としてのエコツーリズム
B アボリジニ居住区におけるエコツーリズム
・ 社会問題とエコツーリズムの位置づけ
トピックス
(1)参加分野が多様である
発表者は州政府、自治体、科学者、研究者、エコガイド、観光事業者(宿泊業・ガイド業)、メーカー、ボランティア、国立公園保護管理官、国際的組織など多様である。参加者は、オーストラリア政府、自治体ボランティア、教育機関、観光事業者、諸外国の観光関連機関から訪れており、中でも民家の完工事業者の割合が高いように見受けられた。
(2)エコツーリズムは自然保護を経済的に実現させるという前提がある
大会主催のエコツーリズムオーストラリア(前 オーストラリアエコツーリズム協会)は、産業活性化の視点よりエコツーリズム振興に取り組むという姿勢を明確にしている団体である。そこで、大会参加者の基本的なコンセンサスとして「エコツーリズムは自然保護を経済的に実現させる」としており、自然保護と観光が対立するものではないことを大前提に議論が進められた。
そこで議論のテーマとしては、自然保護への経済的な援助をどのように進めるか、消費者への自然保護への「気づき」をどのように促すかといったワンステップ前に進んだ議論がそれぞれの関係者の間で展開された。
(3) NEAP3の発表
NEAPとは、エコツーリズム産業の振興を目的とするエコツーリズム事業者を対象とした認証制度。認証の対象は宿泊施設、ツアー、観光施設の3つで、3年ごとに更新され、この大会では今月11月から新たに始動するNEAP3についての概要が発表された。
NEAP3の特徴は、認証の原則を3つのカテゴリーに分けて行っている点にある。3つのカテゴリーとは、@経済的持続性、A環境的持続性、B社会的持続性である。経済的持続性では、ビジネスとして成立し、管理できるかどうかが問われ、具体的には法規、保険、ビジネスプラン、マーケティングプラン、リスクマネジメントといったことや、エコツーリズム商品として他のビジネス商品と異なるビジネス精神を持つことが求められる。
環境的持続性では、インタープリテーションと人材育成、自然保全への具体的な貢献などが求められ、社会的持続性では行政との連携や地域への利益還元、文化(特に土着文化)に対して敬意を払うといったことが要求される。
(4)アボリジニ文化をエコツーリズムに組み込もうとしている
土着文化(アボリジニのこと)を含めたツーリズムに関する議論が進められており、オーストラリアの社会問題と観光事業をつなげようとする試みが見られる。今回の大会では「土着観光」として大きくとりあげられ、アボリジニの人々と一般観光事業者の考えの違いなどが明確に感じられた。アボリジニには政府が特別に補助金を与え援助しており、一般事業者にとっては市場原理を乱す行為なので、喜ばしいことではない。一方でアボリジニの人々は自分たちの土地や文化を利用している観光事業で、自分たちの収入が増えないのはどういうことか、という主張である。この社会問題が、エコツーリズムの振興により解決できるかどうかは判断しかねるが、オーストラリアですすめられているエコツーリズムにとって避けては通れないことである。
(5)日本は国際的なアピール力を強化、世界と連携していく可能性を
議論の内容としては全般に、日本のエコツーリズム推進における課題と重なる部分が多い。例えば、インタープリターを含めた人材育成やインタープリテーションの手法から導かれる環境教育の問題、行政と民間の地域での役割や連携体制の重要性、地域の利益とは何かといった議論がその例としてあげられる。ところが日本の議論と異なる点は、この問題を国際機関との連携において解決を図ったり、アピールしたりしているところである。言語の問題もあるが、日本のエコツーリズムの取り組みも決して先進国といわれるオーストラリアに負けないと感じた。日本の課題は、それを国際的にアピールする人材、国際的な連携の中で取り組みが進められる人材や機関がないことである。
(6)日本のエコツーリズム研究に参考となる事例
今回の大会において、オーストラリア国内外におけるいくつかの事例が紹介された。特に印象深かった3点を以下に挙げる。
@ カンガルー島
サウスオーストラリア州南部に位置するカンガルー島では、行政、民間ともにエコツーリズム振興に積極的に取り組んでいる。HPにて観光が島内の経済にもたらした効果や雇用創出に関するデータを公表している。
A NOLS(National Outdoor Leadership School)
インストラクター、ガイドを養成するプログラムを世界各地で展開している民間NPO団体。大学との単位連携、学生向けや事業者向けのプログラムがあり、環境教育とインストラクター養成を行っている。
B ケアンズ憲章
エコツーリズム推進にあたり、複数の関連機関に対する役割を示したもので、コミュニティー、政府、政府関連機関、NPO、民間エコツーリズム事業者、金融機関、開発業者、教育・調査機関、メディア、マーケティング機関に対する提言が含まれている。前回2002年のケアンズで行われた国際大会の際に制定された。
プログラム
■11月10日 National Wine Centre, Adelaide
11:00-12:30
開会あいさつ Clare Macfarlane(エコツーリズム オーストラリア)
講演1「ようこそ、サウスオーストラリアへ」 Hon Dr Jane Lomax-Smith MP(サウスオーストラリア州観光局長)
講演2「過去を売る ー化石の観光活用の可能性」Dr Tim Flannery(サウスオーストラリア博物館)
講演3「エコツーリズム ー意味付けることで差別化を図る」 Prof Sam Ham(アイダホ大学)
オーストラリア最優秀エコガイド 受賞者プレゼンテーション
13:30-15:00
分科会
1. エコツーリズム商品の開発とマーケティング
「森林管理と観光のゆくえ」
「サウスオーストラリアの新観光ルートについて」
「ゼロエミッション、低騒音の実用的電気ボート」
「遺跡観光ー新しい商品開発」
「サステナブル エコツーリズムを新しい世紀へ」
2. 認証制度
3. 研究、政策、計画
4. コミュニティー、エコツーリズム・マーケティング
5. ATSIS(Aboriginal and Torres Strait Islander Services)ワークショップ
「インディジニアス(土着文化)・ツーリズムとエコツーリズムの海外/国内旅行需要」
15:30-17:00
講演4「オーストラリアにおける土着コミュニティーへのエコツーリスト参加の可能性」Klynton Wanganeen(ATSIC理事)
講演5「マレー川と生きる」Don Blackmore(マレー/ダーリン川流域委員)
講演6「"カエル"のはなし」Prof Mike Tyler(アデレード大学)
講演7「観光開発と世界遺産の保護ー新しい共働関係」Dr Natarajan Ishwaran(UNESCO世界遺産 自然遺産部門代表)
講演8「エコツーリズムに"エコ"を取り入れる」 Douglas Trent(Focus
Tours Inc. 社長)
18:00-22:00
Warrawong Earth Sanctuary にてツアー体験/交流会
■11月11日 National Wine Centre, Adelaide
09:00-10:05
保護エリアマネージャー/観光機関のプレゼンテーション
「近年の傾向とこれからの取り組み等」
10:05-10:20
講演9「NEAPVの始動」 Tony Charters(NEAP委員会)
10:20-10:30
UNESCO世界遺産センターとエコツーリズムオーストラリアによる世界遺産観光プログラム開発とパートナーシップ基金に対する協力 調印式
11:00-12:30
講演10「ツーリズムと生態学的多様性、ツーリズムの社会的功績を明確に」 Costas Christ(コンサべーション・インターナショナル)
講演11「市場におけるオーストラリアの責任:オーストラリアの観光財産の将来性を確立するために」 Ken Boundy(オーストラリア観光委員会)
講演12「観光と環境」 Graeme Worboys(グリフィス大学)
講演13「Leave No Trace Australiaについて」 Richard Brame(NOLS:
National Outdoor Leadership School)
講演14「保護エリアでのサステナブル観光」 Greg Leaman(サウスオーストラリア州 環境・遺産課)
13:00-13:15
Aussie Outback Lodge プレゼンテーション
13:30-15:00
分科会
1. エコツーリズム商品の開発とマーケティング
2. 研究、政策、計画
3. 政府自治体、産業とエコツーリズムの関わり方
4. コミュニティー、エコツーリズム・マーケティング
5. ATSISワークショップ
15:30-15:35
NEAP-優秀賞発表
15:35-17:00
講演15「サステナビリティを実現するエコツーリズムの可能性」 Senator Bob Brown MP
講演16「オーストラリアの保護エリアにおけるサステナブル観光の発展」 Hon Warren Entsch MP
講演17「自治体と取り組むーエコツーリズムオペレーターからの視点より」 Gray Smith(Tourism
Leisure Corporation Pty Ltd)
講演18「サウスオーストラリア州のスキューバーダイビング観光」 Karen Gowlett-Holmes(海洋生物学者、写真家)
■11月12日 National Wine Centre, Adelaide-Renmark
09:00-10:30
分科会
1. エコツーリズム商品の開発、政府自治体や産業との関わり方
2. 研究、政策、計画
「森林と湿地帯の価値」
「ワイルドライフツーリズムに関する研究をユーザーに活用する」
「ヴィクトリア州アドベンチャーアクティビティー基準ー自治体とのパートナーシップのもとでの産業主導」
「サステナブルオンラインの構築:オーストラリアエコツーリズム産業のインターネットを活用したビジネス展開の研究」
「エコツーリズムーロードホウ島における雑草管理の新しいアプローチ」
3. コミュニティー許容量の構築とパートナーシップについて
4. ROC(Respecting Our Culture)オペレーター フォーラム
11:00-12:30
講演19「コミュニティーとエコツーリズムの役割」 Bob McNulty(Partners for Livable
Communities)
講演20「"湿った"観光を目指して」 Dr Peter Bridgewater(ラムサール会議)
講演21「モダン・エクスプローラー−エコツーリズム産業の新しい開拓者」 Grant Hunt(Voyages
Hotel& Resorts)
講演22「ROCプログラム」 Cathy Freeman(オーストラリア アボリジニ観光大使)
■11月13日 Renmark Hote & McCormick Centre, Renmark
07:00-08:30
朝食会、ワークショップ開会あいさつ
08:00-08:20
講演23「形式にこだわらず まず前に進もう」 John Morse(ヴィクトリア観光局)
09:00-10:30
ワークショップ
WS1.「観光と保護間の一般的なアジェンダの実現」
WS2.「サウスオーストラリアのNEAP商品:将来に向けたエコツーリズムを確立する」
WS3.「サステナブル レクリエーション」
11:00-12:30
ワークショップ
WS4.「NEAPV」
WS5.「許容量の構築、ATSIS」
WS6.「災害への対策」
13:30-15:00
ワークショップ
WS7.「サステナブル観光における世界遺産の役割」
WS8.「ATSIS事例」
WS9.「保護エリアの公私機関の連携ー事例より」
15:30-17:00
ワークショップ
WS10.「エコガイド インタープリテーションー適切な人数の重要性ーあなたの場合はどうか」
WS11.「生態学的多様性を実現するエリアを増やすために観光を利用する」
WS12.「ケアンズ憲章」
18:45-20:00
ウォーキングツアー(Banrock Station)
20:00-01:00
交流会/閉会
■11月14日 Renmark
9:00-
各種エコツアーの実施
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